導入ガイド

IVRとは?電話自動応答の仕組み・使い方とAI電話との違い

企業の電話に使うIVR(自動音声応答)を解説。プッシュ式・音声認識式・会話型AIの違い、部署転送、営業時間、同時着信、既存番号やPBXとの接続を整理し、業務別の設計例と導入チェックリストを紹介します。

寺下 昇希Bell 技術責任者読了 16分

この記事の要点

  • IVRは電話の案内・用件の受付・振り分けを自動化する仕組み。音声認識やAIを組み合わせる構成もある。
  • 案内の短さだけでなく、無入力、営業時間外、転送先不在、満席時の行き先まで決める。
  • 既存番号の継続利用、同時接続数、PBX・業務システム連携は、製品と電話契約ごとに確認する。

IVRは、電話に自動で応答し、案内・受付・担当窓口への振り分けを行う仕組みです。 「予約は1番、変更は2番」という音声メニューが代表例ですが、音声認識や業務システムとの連携を使う構成もあります。

会社に導入するときは、「電話に出る人を減らせるか」だけでなく、「電話をかけた人が目的を達成できるか」を確認することが大切です。部署へつながらない、予約したつもりなのに記録がない、といった状態では受付を自動化しても問題が残ります。

この記事では、企業の代表電話・店舗・問い合わせ窓口向けに、IVRの仕組みと設計方法を整理します。料金の具体例から比較したい方は、IVRの費用・サービス比較をご覧ください。

IVRの基本:電話に出てから用件を引き継ぐまで

IVRはInteractive Voice Responseの略です。通信事業者の説明でも、利用者の操作に応じた自動応答や担当部署への転送が基本機能として紹介されています。NTTドコモビジネスのIVR解説

一般的な受付の流れは、次の5段階です。以下は仕組みを理解するための構成例であり、すべてのサービスに全機能が含まれるという意味ではありません。

段階システムが行うこと設計時に決めること
1. 着信電話番号への着信を受ける全件を受けるか、無応答時・話中時だけ受けるか
2. 案内会社名、受付時間、選択肢などを再生長い前置きを避け、何ができる窓口か伝える
3. 入力番号や音声から用件を受け取る無入力、聞き取り失敗、選択肢にない用件の扱い
4. 処理案内、録音、転送、連携処理へ進む「受付した」と「手続きが完了した」を分ける
5. 終了・引き継ぎ結果を通知し、必要な対応を残す誰が、何を見て、いつまでに対応するか

たとえば営業時間の問い合わせなら、案内を再生して完了できます。一方、修理の依頼は名前や症状を受け付けても、訪問日や料金の確定には担当者の確認が必要かもしれません。用件ごとに「どこまで進めば完了か」を先に決めると、機能選定がしやすくなります。

プッシュ式・音声認識式・会話型AIの違い

「IVR」と「AI電話」の呼び方はサービスによって重なります。IVRをすべて番号入力だけの仕組みと考えると、比較を誤りやすくなります。電話基盤のTwilioでも、番号入力であるDTMF、音声入力、その併用を扱っています。Twilio公式ドキュメント

比較では、名称よりも入力方法と処理の範囲を見ます。

方式利用者の操作適した用件の例主な確認点
プッシュ式IVR案内に合わせて番号を押す部署選択、営業時間案内、定型メニュー選択肢のわかりやすさ、無入力時の経路
音声認識式IVR「予約」「変更」などを話す用件分類、会員番号などの入力言い換えの範囲、認識失敗時の再入力
会話型AI・ボイスボット自然な言葉で用件を伝える予約希望の聞き取り、複数項目の確認訂正への対応、回答根拠、連携失敗時の扱い
有人対応担当者と相談する例外判断、交渉、複雑な事情の相談待ち時間、担当範囲、引き継ぎ情報

プッシュ式は、選択肢が少なく明確な窓口で使いやすい方式です。会話型AIには自由な発話を受け付けられる利点がありますが、固有名詞の誤認識や情報不足への対処も必要です。AIなら必ず短時間で解決できる、という比較にはしません。

また、予約台帳との接続可否は「番号入力かAIか」だけでは決まりません。プッシュ式でも外部システムと連携する構成があり、会話型AIでも受付内容を人へ通知するまでのサービスがあります。会話処理の詳しい流れはボイスボットの仕組みと対応できる業務で解説しています。

IVR・PBX・電話転送・留守番電話の役割

似た言葉でも、担う範囲が違います。

用語主な役割IVRとの関係
PBX外線・内線の接続や電話端末を管理するIVRを搭載する製品も、外部のIVRへ接続する構成もある
電話転送別の番号や端末へ通話を送るIVRへ着信を渡す入口にも、IVRから人へ渡す出口にもなる
留守番電話不在時の音声メッセージを保存するIVRの分岐先として使うことがある
ACD決めたルールで担当者へ着信を配分する用件を分類するIVRと組み合わせて使われる
待ち行列応答できる担当者が空くまで電話を待たせる転送先が混雑しているときの経路の一つ

「IVRがあるから社内電話をすべて置き換えられる」とは限りません。内線、代表組、保留、外線発信、FAXなど、現在使っている機能を洗い出し、残す設備と変更する部分を分けましょう。

代表電話の設計例:通常時と困ったときを一緒に決める

以下は、法人向けサービス会社の代表電話を想定した架空の設計例です。Bellの導入事例や標準機能を示すものではありません。

営業時間内のメニュー

案内例は「お電話ありがとうございます。新規のご相談は1番、ご契約中のお問い合わせは2番、その他は3番を押してください」です。

入力・状態通常の行き先つながらない場合
1:新規の相談営業担当へ転送氏名・会社名・連絡先・希望時間を受付
2:契約中の問い合わせサポート窓口へ転送用件を受付し、対応担当へ通知
3:その他総合受付へ接続担当者確認の折り返し受付
入力なし・対象外の番号短い案内を再生再試行後、有人窓口または録音受付へ

この例では入口を3つにしていますが、3つが常に最適という意味ではありません。利用者が自分の用件を選べるかを確認し、実際の電話の内容に合わせてまとめます。社内部署名より、「請求書について」「予約の変更」といった用件の言葉の方が選びやすい場合があります。

営業時間外・休業日

営業時間外は、営業中と同じ転送を繰り返すのではなく、次にどうすればよいかを伝えます。

  • 営業再開の日時と、受付できる内容を案内する
  • 折り返し受付の担当と確認時刻を決める
  • 定休日とは別に、祝日・臨時休業・年末年始を登録する
  • 折り返し時間を約束する場合は、実際に守れる体制を用意する

「24時間受付」と「24時間その場で問題を解決できる」は区別します。夜間に録音が残っても、翌朝の確認担当が決まっていなければ、対応漏れは防げません。

操作できない・人と話したいとき

無入力、聞き間違い、操作の苦手な利用者を想定し、途中から別の経路へ進めるようにします。音声メニューの繰り返し回数、番号入力への切り替え、有人対応が利用できる時間を決めてください。無入力を自動的に「用件なし」と扱うと、必要な電話を失う可能性があります。

同時着信・待ち行列・あふれ呼の確認

IVRが自動応答しても、同時接続が無制限になるとは限りません。回線、サービス、待ち行列、転送先には別々の制約があります。

たとえばAmazon Connectの公式資料は、同時通話の上限とキューの最大容量を分けて説明し、満杯時には別の経路や折り返し受付を設計する必要があることを示しています。これは容量確認の一例であり、他社製品にも同じ上限値が適用されるという意味ではありません。AWSのキュー容量に関する公式資料

見積もり時には、月間件数と合わせて次の情報を共有しましょう。

  • 最も混む時間帯と、そのときの同時着信数
  • 自動案内中、保留中、有人転送中に使うチャネルの数え方
  • 担当者の同時対応人数と、平均的な対応時間
  • 待たせる時間の上限と、あふれた電話の行き先
  • 回線障害・サービス障害時に切り替える連絡手段

自動受付の容量と、担当者が処理できる件数は別です。 受付が増えても折り返しが翌日へ積み上がるなら、受付の優先順位や担当配置も見直します。

今の電話番号を使える?PBX・業務システムとの接続方法

既存番号を維持する代表的な方法には、通信会社の転送サービスでIVRの番号へ渡す方法、対応するサービスへ番号を移行する方法、PBXと接続する方法があります。選べる方法は、番号の種類、現在の契約、設備、導入先サービスによって変わります。

転送方式では、現在の電話番号の契約を残したまま別の番号へ通話を送ることがあります。そのため、IVR側の料金に加えて既存回線や転送区間の料金も確認します。NTT西日本も、ボイスワープ契約者から転送先までの通話料は契約者の負担になると説明しています。転送時の通話料金に関する公式FAQ

接続・連携最初に確認する内容見落とすと起こること
現在の代表番号番号種別、転送契約、番号移行条件番号を残せない、別の通話料が発生する
社内PBX・電話機接続方式、内線転送、発信者番号の表示既存の取り次ぎ操作が使えない
予約台帳・CRM読み取りだけか、登録・変更も可能か受付後に人が再入力する作業が残る
メール・チャット通知送る項目、担当者、失敗時の再通知通知だけ届き、対応者が決まらない
録音・文字起こし保存期間、閲覧権限、出力・削除方法必要な記録が残らない、閲覧範囲が広すぎる

予約を確定する場合は、空き枠照会だけでなく登録結果の確認まで必要です。連携が止まったときは「予約を受け付けた」と断定せず、確認が必要な受付として残すなど、業務側の扱いも決めます。

業務別の使い方:自動化する部分と人に残す部分

次の表は業務設計の例です。特定企業の実績や効果の保証ではありません。

業務IVRで始めやすい使い方会話型AIを検討する場面人に残す判断
企業の代表電話営業・サポート・請求へ振り分け相手の説明から用件を分類したい契約条件、取引上の交渉
店舗・施設営業時間、アクセス、休業日の案内予約希望の日付・人数などを聞き取りたい特別対応、例外的な予約条件
EC・通販注文、配送、返品の窓口を分ける本人確認後に注文情報を照会したい返金可否、配送事故の個別判断
修理・保守対象商品や受付時間で振り分け型番、状態、連絡先を順に確認したい安全性、作業可否、訪問条件
多拠点の受付店舗や地域別に窓口へ転送店舗名が曖昧な問い合わせを整理したい拠点間調整、個別の約束

問い合わせの途中で追加質問が多い場合や、選択肢が増え続ける場合は、AI電話の対応範囲と導入判断も比較材料になります。

なお、受電の振り分けと、企業側から電話をかける業務は分けて設計します。案内の一斉発信や商談の受付を検討する場合は、オートコールと会話型AI架電の違いで対象業務を確認してください。

導入は「用件を一つ選ぶ→試す→指標で直す」の順に

  1. 現状を記録する。 用件、件数、時間帯、対応時間、転送、かけ直しを、代表的な期間で確認します。
  2. 最初の対象を絞る。 正解が明確な案内や用件分類などから始めます。
  3. 通常・例外の経路を作る。 無入力、休業、転送先不在、混雑、障害も含めます。
  4. 実際の端末からテストする。 携帯電話の番号入力、途中切断、言い直し、騒音下の音声入力を試します。
  5. 担当者への引き継ぎを確認する。 通知の到着だけでなく、担当者が処理して完了を記録できるところまで確認します。
  6. 対象を広げるか判断する。 利用者と担当者の負担が減った用件から範囲を増やします。

改善には、着信件数だけでなく用件別の指標を使います。分母を揃えずに「自動化率が高い」と評価しないことが重要です。

指標計算・確認方法読み違えやすい点
用件完了率完了を確認できた対象用件数 ÷ 対象用件の受付数音声を再生して切断された件数をすべて完了扱いにしない
有人接続率担当者に接続できた件数 ÷ 有人転送を試みた件数IVRが応答した割合とは別に見る
再問い合わせ同じ用件で再度連絡した件数と理由完了判定や案内内容に問題がないか確認する
残る有人工数通話、折り返し、入力、設定更新、確認の合計時間電話に出ていた時間だけを削減額にしない
離脱メニュー中・待機中などの切断地点案内だけで解決した切断と困って諦めた切断を区別する

まとめ:IVRは受付の出口まで設計すると使いやすい

IVR選びの出発点は、用件の分け方と受付後の仕事を整理することです。短い案内、困ったときの経路、営業時間外の運用、容量、既存設備との接続を確認すると、必要な方式が見えてきます。

部署選択で済む用件はプッシュ式、会話で情報を集めたい用件は音声認識やAI、人の判断が必要な用件は有人対応へつなぐなど、業務ごとの組み合わせで考えましょう。

Bellへの相談時にも、現在の電話番号・件数・多い用件・残したい有人対応を共有すると、比較に必要な条件を整理しやすくなります。自社の電話対応について相談する

よくある質問

IVRとは何の略ですか?電話では何をする仕組みですか?

Interactive Voice Responseの略で、自動音声応答を指します。電話の案内を流し、番号入力や音声入力に応じて用件を受け付けたり、担当窓口へ振り分けたりします。本記事では企業の電話業務に使うIVRを扱っています。

IVRを導入すると、今の電話番号は変わりますか?

現在の番号への着信をIVRの番号へ転送する方法など、番号を維持できる構成があります。ただし、転送サービスの契約、対象の番号種別、転送通話料、番号移行の可否は個別確認が必要です。どの番号でも無条件に引き継げるわけではありません。

IVRなら同時に何件でも電話を受けられますか?

無制限とは限りません。電話回線、IVR、待ち行列、転送先のそれぞれに容量や契約上限があります。ピーク時の同時接続数と、上限を超えた際の案内・折り返し受付を確認してください。

プッシュ式IVRよりAI電話の方がよいですか?

少数の用件を確実に振り分けたいならプッシュ式が候補になります。自由な言い方で用件を聞き取り、複数項目を確認したいなら会話型AIが候補です。聞き間違い、例外対応、費用、運用負担も含め、実際の電話で比較します。

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寺下 昇希

寺下 昇希

Bell 技術責任者

Bellの技術責任者として、AI電話システムの設計・導入・改善に携わっています。現場の電話業務課題を、実務に耐える会話設計とシステム連携で解く知見を発信しています。

  • AI電話プロダクトの設計・実装を統括
  • 業種別シナリオ設計と運用改善を多数支援
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