FAX自動化で業務を変える:AI-OCR・RPA活用の最新事例と導入ポイント
いまも約40%の企業がFAXを業務で使い続ける日本。デジタル庁が廃止を推進するなかでも「やめられない」現場のために、AI-OCR・RPA・クラウドFAXを組み合わせたFAX自動化の最新事例と実装方法を解説します。
2026年、それでも日本の現場はFAXを使っている
デジタル化が叫ばれて久しいなか、2024年の調査でも約40%の企業が業務でFAXを使い続けている(情報通信ネットワーク産業協会)。
デジタル庁は2022年からFAX廃止を推進し、省庁内の336件のFAX業務のうち286件を廃止または廃止予定にしました。教育現場では2025年度中に全学校でFAXを原則廃止する方針が示されています。
それでも企業の現場ではFAXが消えない。なぜか。そしてどう変えていくか——この記事ではFAX自動化の現実と、AI・RPAを活用した最新アプローチを具体的な数字とともに解説します。
FAXがなくならない5つの理由
「FAXをやめたい」と思っている担当者は多い。しかし現場ではなかなか廃止できない。その背景には構造的な問題があります。
1. 取引先の商習慣に縛られている
「自社はメール対応できるが、仕入先・得意先がFAXしか使わない」——これが最も多い廃止できない理由です。製造業・建設業・医療業では、業界全体でFAXが標準となっており、一社だけやめることができません。
2. 証拠として機能している
FAXは送信確認レポートが自動出力され、「いつ・何を送ったか」の証拠が手元に残ります。受発注や契約変更など、記録として残したい業務では、この証拠性がFAXを使い続ける理由になっています。
3. 図面・帳票を「そのまま」送れる
不動産の物件図面、製造業の発注伝票、医療機関の処方箋——フォーマットが複雑な書類を、相手のシステムに依存せず「そのまま」送れる手軽さはFAX固有の強みです。
4. 紙ベースのフローに深く組み込まれている
「FAXが来たら棚に入れる→担当者が見る→手入力する→ファイリングする」という業務フローが、社内の仕組みとして長年定着しています。FAXだけやめても、前後の処理まで変えないと業務が成り立たない。
5. 変化への抵抗
ベテラン社員を中心に「FAXの方が確実」という信頼感があります。IT機器への苦手意識も重なり、組織として変えることに大きなコストがかかります。
FAXを「廃止」ではなく「自動化」するという発想
廃止を無理に進めるより、FAXはFAXのまま受け付けながら、処理だけを自動化するという考え方が現実的です。
「FAXが来たら人間が目で見て手で入力する」という部分をAIに代替させる。取引先はこれまで通りFAXを送るだけ。社内の担当者は入力作業から解放される。これがFAX自動化のコアです。
現在、FAX自動化には主に3つの技術が組み合わさって使われています。
技術①:AI-OCR(AI文字認識)
FAXで受信した紙の情報を、AIが自動で読み取ってデータ化します。
従来のOCRは定型フォームにしか対応できませんでしたが、AI-OCRはレイアウトが異なる非定型帳票・手書き文字・かすれた印字にも対応できます。取引先ごとに異なる注文書のフォーマットでも、高精度で品番・数量・納期などを抽出します。
技術②:RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)
AI-OCRで読み取ったデータを、基幹システム・在庫管理システム・ERPへ自動で入力します。「OCRでデータ化→RPAでシステムに転記」の組み合わせで、人が介在する作業をゼロに近づけます。
技術③:クラウドFAX
物理的なFAX機を不要にし、受信したFAXをPDFとして自動保管・転送するサービスです。クラウドFAXとAI-OCRを組み合わせることで、FAX受信→データ化→システム登録が完全自動で流れます。
導入事例:実際の数字で見るFAX自動化の効果
事例1:工具販売事業者(RPA + AI-OCR)
月間約2,000件の伝票をFAXで受信していたこの企業では、従来は1枚あたり10分の手入力と確認作業に月約330時間を費やしていました。
AI-OCRとRPAを導入した結果、1件あたり約3分に短縮。月330時間かかっていた業務が大幅に圧縮されました。
事例2:受注センター運営企業(クラウドFAX + スマートOCR)
月平均4,000件の受注をFAXで受け付けていたこの企業は、スマートOCR導入により月約80時間の工数削減に成功しました。
事例3:卸売業(従業員463名)
1日3,700件のFAX受注と400件のFAX送信をシステム化した結果、年間1,000万円以上のコスト削減を達成。入力担当者の数も削減でき、残業時間の大幅な圧縮にもつながりました。
事例4:フライスター(受注AIエージェント)
パン粉業界リーディングカンパニーのフライスター株式会社は、AIエージェントとRPAを組み合わせた「受注AIエージェント」を導入。注文書情報の取得から基幹システム連携用データの出力まで、93.6%以上の精度で自動化に成功しました。FAX受発注という既存の商習慣を変えずにペーパーレス化を実現した事例として注目されています。
事例5:管理本部の業務処理(AI-OCR + RPA)
月250時間にのぼる紙書類の入力・処理業務に、AI-OCRとRPAを組み合わせて導入した企業では、本社管理本部の作業時間を月250時間削減。13人体制だった入力処理を9人で対応できるようになり、夜9時まで続いていた入力業務が夜7時頃には終わるようになりました。
FAX受注と電話受注——両方の自動化を考える
FAXで来る注文と、電話で来る注文は表裏一体です。特に製造業・卸売業・小売業では、「取引先によってFAXで発注するか電話で発注するか」が異なり、どちらか一方だけ自動化しても業務の穴が残ります。
FAX受注の自動化を進める際、あわせて検討したいのが電話受注の自動化です。
Bell AI Callは、電話をAIが一次受けし、注文内容・問い合わせ内容をデータ化して担当者へ転送するサービスです。
- 電話で来た注文をAIが受け付け、担当者に通話要約を転送
- 定型的な問い合わせ(在庫確認・納期確認・営業時間など)はAIが完結
- 深夜・休日でも無人で一次対応を継続
FAX自動化(AI-OCR + RPA)と電話自動化(Bell AI Call)を組み合わせることで、「FAX・電話の両方で来る受注や問い合わせを、ほぼ自動で処理する」体制が整います。担当者は確認・判断が必要なケースにだけ集中できます。
FAX自動化を進める際の3つの注意点
1. 「まず一部のフローから」スモールスタートで検証する
いきなりすべてのFAX処理を自動化しようとすると、例外対応の多さに躓きます。「特定の取引先からの注文書のみ」「一種類の帳票のみ」といった限定的な範囲で始め、精度と効果を確認してから広げる進め方が現実的です。
2. 読み取り精度の検証を怠らない
AI-OCRは高精度ですが、手書きの薄い文字・特殊なフォント・複雑なレイアウトでは精度が落ちることがあります。導入前に実際のFAX帳票でテストし、精度が許容範囲内かを確認することが重要です。
3. 例外処理のフローを先に設計する
自動化できなかった帳票をどう処理するか、AIが判断できなかった内容を誰がチェックするか——例外フローを設計せずに導入すると、例外が発生するたびに現場が混乱します。「自動化できない10%」のフローを先に決めておくことが成功の鍵です。
よくある質問
Q. FAXをやめずに自動化できますか?
A. はい。FAX自動化はFAX機・FAX番号をそのまま維持しながら、「受信したFAXの処理」を自動化します。取引先はこれまで通りFAXを送るだけで良く、社内の処理フローだけが変わります。
Q. 手書きの注文書にも対応できますか?
A. AI-OCRは手書き文字にも対応しています。ただし、文字のかすれや極端な崩し字では精度が下がるケースがあります。実際に使用する帳票でテスト導入し、精度を確認してから本格展開することをお勧めします。
Q. 小規模な会社でも導入できますか?
A. 月数百件程度の受注量から、費用対効果が出るケースがあります。クラウドFAX単体であれば月数千円から始められるサービスもあります。まずは現在のFAX処理にかかっている工数を試算し、自動化による削減効果を見積もることから始めるとよいでしょう。
まとめ
FAXは「古い技術だからやめる」ものではなく、「自動化して賢く使う」ものです。AI-OCRとRPAの組み合わせにより、従来は人が手作業でこなしていたFAXの処理を大幅に自動化できます。
月数百時間の削減、年間1,000万円以上のコスト削減——これらは特別な大企業の話ではなく、AI-OCR + RPA の適切な導入で多くの企業が実現している成果です。
FAX受注の自動化とあわせて、電話受注の自動化も検討することで、受注業務全体を効率化する体制を整えることができます。
Bell AI Callへのお問い合わせ
電話での受注・問い合わせ対応の自動化について、Bell AI Callにご相談ください。FAX自動化とあわせた受注業務全体の効率化についても、最適なプランをご提案します。
サービスの詳細や資料のご請求は、お問い合わせ からお気軽にご連絡ください。
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寺下 昇希
Bell 技術責任者
Bellの技術責任者として、AI電話システムの設計・導入・改善に携わっています。現場の電話業務課題を、実務に耐える会話設計とシステム連携で解く知見を発信しています。
- AI電話プロダクトの設計・実装を統括
- 業種別シナリオ設計と運用改善を多数支援