コールセンターDX

あふれ呼とは?放棄呼との違い・原因別の対策とAI電話の導入チェック

あふれ呼を減らすには、回線の上限、待ち呼・放棄呼、担当者の未応答を分けて確認します。ピーク時間の測り方、原因別の対策、AI一次受付から有人転送・折り返しまでの設計と、試験導入のチェック項目を解説します。

寺下 昇希Bell 技術責任者読了 8分

この記事の要点

  • あふれ呼・放棄呼の集計範囲はシステムごとに確認し、回線の容量不足と待機中の切断を分ける
  • 日次平均だけで判断せず、15分・30分単位の着信集中と、実際に応対できる人数を調べる
  • AI一次受付を導入しても、有人転送先や折り返し担当者の処理量は別に確保する
  • 応答率に加え、誤案内、引き継ぎ漏れ、折り返し期限超過を確認して導入を判断する

あふれ呼とは、電話が集中して回線や受付体制の対応量を超え、応答しきれなくなる呼を指します。対策を選ぶときは、電話が入口でつながらないのか、担当者を待つ間に切れるのか、受け付けた後の対応が滞るのかを分けて確認します。

回線を増やしても応対する人が足りなければ、待ち時間が残ります。AI電話で用件を受け付ける場合も、人への引き継ぎや折り返しが必要な案件の処理体制を確保する必要があります。

この記事では、コールセンターや企業の電話窓口で使える、原因の調べ方と改善手順を整理します。電話業務全体の導入手順は、コールセンター自動化ガイドも参照してください。

あふれ呼・待ち呼・放棄呼を、ログの状態で分ける

「あふれ呼」が含む範囲は一律ではありません。例えばNTTドコモビジネスの解説では待ち呼を含む説明があります。電話を振り分けるACDなどの管理画面を比較するときも、名称が同じだからといって同じ指標とは限りません。

以下は、原因を特定するための整理です。利用中の回線・システムのログ項目を、実際に起きた状態に対応させてください。

状態電話をかけた人から見た状況切り分けるポイント
容量超過で受付に入れない話し中になる、受付前に切断される回線・同時接続・待ち行列の上限に達したか
待ち呼接続後、担当者につながるまで待っている待機人数と待ち時間、応対できる人数
待機中の放棄呼待っている間に発信者が電話を切る切断までの時間、直前の案内、再入電の有無
担当者の未応答呼び出した担当者が出ず、別の人へ回る、または終了する一つの着信で何回呼び出したか、最終的につながったか
システム側の切断上限時間やエラーなどで電話が終了する発信者の切断と区別できるか、終了理由は何か

未応答の通知を数えただけでは、取りこぼした顧客数は分かりません。同じ電話が複数の担当者へ順番に配られ、最後の担当者が応答する場合もあるためです。集計単位を「着信」「担当者の呼び出し」「問い合わせ案件」のどれにするかも明記します。

最初に調べるのは、ピーク時間と詰まっている場所

月間の着信数だけでは、短時間の集中を捉えられません。まず通常時と繁忙時を含む期間を選び、15分または30分単位で確認します。この区切りは調査の始め方の例であり、すべての窓口に共通する基準ではありません。

入口から対応完了まで、同じ時間帯を追う

  • 回線の入口:着信試行、受付に到達した件数、容量超過やエラーで到達しなかった件数
  • 待ち行列:待機に入った件数、発信者が切断した件数、担当者への接続までの時間
  • 応対体制:実際に受電できた人数、通話・保留・後処理にかかった時間
  • 受付後:有人転送の成否、折り返し待ち件数、最も古い未対応案件、対応完了までの時間

回線側で拒否された着信は、受付システムのログに残らないことがあります。取得できる範囲を回線事業者とシステム提供者に確認し、不明な件数をゼロとして扱わないでください。受付時間外、障害発生中、広告や告知の直後も分けて残します。

あふれ呼率・放棄呼率は分母をそろえる

待機中の切断を調べるなら、「待機中に発信者が切断した件数 ÷ 待ち行列に入った件数 × 100」が一つの計算方法です。Amazon Connectの公式指標定義でも、待機中の顧客切断と折り返し待ちを区別しています。自社で集計する際は、利用中の製品の仕様を優先してください。

例えば、ある30分間に着信試行が100件あり、10件は容量超過で受付に入れず、90件が待ち行列に入り、そのうち18件が発信者の切断で終了したとします。これは説明用の架空例です。

この場合、待ち行列に入った90件を分母にすれば放棄の割合は20%、全着信試行100件を分母にすれば18%です。どちらも計算できますが、測っている範囲が異なります。容量超過の10件も別に記録し、改善前後で定義を変えないことが重要です。

短時間の切断、折り返し受付、同じ人のかけ直しを含めるかも決めます。着信時刻で対象をそろえ、集計締め時点でまだ待機・対応中の電話は未確定として残すと、期間をまたぐ通話の扱いも確認できます。

原因別に選ぶ、あふれ呼を減らす対策

観測した状態確認する原因先に検討する対策
受付に到達する前に話し中・切断になる回線や同時接続数、転送経路の容量不足各段階の上限確認、契約・構成の見直し、上限時の別受付
特定の時間帯だけ待ち呼が増える着信集中とシフト・休憩時間のずれピークに合わせた配置、応援体制、折り返し受付
通話や保留が長く、次の電話に出られない情報検索、承認待ち、用件に合わない振り分けFAQ整備、権限と担当の整理、案内・記録作業の改善
定型的な確認が繰り返されるWebの情報不足、案内が見つけにくいWeb案内の更新、IVR、AIによる承認済み情報の案内
営業時間外に未応答が集中する受付時間と顧客が電話する時間のずれ受付時間の見直し、時間外案内、翌営業日の対応体制
一次受付はできるが未対応が増える転送先や折り返し担当の処理量不足引き継ぎ先の確保、担当・期限の設定、未対応案件の点検

担当者の人数を見るときは、在籍人数ではなく、その時間に電話へ応対できる人数を使います。通話後の記録作業や休憩を含めずに見積もると、受けられる量を過大に考えがちです。

平均通話時間を短くするために、説明を途中で切り上げる運用は避けます。保留や重複確認を減らし、同じ用件でのかけ直しが増えていないかも確認してください。

折り返し受付は、IVRでも検討できます。NTTドコモビジネスのあふれ呼対応ダイヤルは、そのサービス例です。必要なのが短い連絡先受付なのか、会話で用件を整理することなのかを決めてから方式を選びます。

AI電話を使うときは、受付後までつながるフローにする

AI電話は、登録した情報の案内や用件の聞き取りなどを一次受付に組み込む選択肢です。AIが電話に出たこと、用件を記録したこと、人が対応を引き受けたこと、問題が解決したことを別の状態として管理します。

混雑時にどこからAIへ回すか

対象は「担当者が応答できない場合」「決めた待ち時間を超えた場合」「特定の用件」「受付時間外」などから選びます。以下は運用の設計例で、Bellの標準設定や導入実績を示すものではありません。

  1. 回線・受付システムで混雑を検知し、設定した条件でAI受付へつなぐ。
  2. AI受付であることを案内し、用件を短く聞く。
  3. 確認済みの定型案内は回答し、判断が必要な用件や人を希望する電話は担当者へ回す。
  4. 転送先が応答しない場合は、予備連絡先や折り返し受付など、決めた経路へ進む。
  5. 折り返しを希望する場合は、必要な連絡先と連絡可能な時間を確認し、担当者・対応期限を記録する。
  6. 担当者が内容を確認したか、期限までに対応したかを点検する。

回線の入口が埋まった時点でAIへの転送も始められない構成では、AI側の受付能力だけを増やしても届きません。着信、転送、AI受付、有人転送の各段階で、同時利用の条件と上限時の動作を確かめます。クラウドサービスであっても無制限とは限りません。

人につながらないときの案内を決める

転送先が話し中、不在、留守番電話になった場合の動作を分けてテストします。通話の接続を試みただけで「担当者へ引き継ぎ済み」にせず、担当者の応答や受領を確認できる状態を設けます。

折り返しを受け付ける場合は、実際に連絡できる担当者と時間を確保してください。確認できない折り返し時刻や手配の完了をAIに約束させないようにします。人を希望する電話、聞き返しが続く電話、定めた緊急条件に該当する電話の切り替え先も事前に決めます。

Bellでは、条件に応じて担当者へ接続する転送・CTI機能を紹介しています。既存の回線で使える転送方式、予備連絡先への切り替え、接続失敗時の処理は、自社の希望する動作を示して確認してください。

聞き取る情報と共有先を絞る

一次受付では、用件の分類と引き継ぎに必要な項目を先に決めます。折り返しに不要な住所や詳細な個人事情まで、一律に聞き出す設計は避けてください。連絡先は復唱などで確認し、誤記による再連絡の失敗を点検します。

録音・文字起こしを行う場合の案内、保存目的・期間、閲覧できる担当者、削除方法、AI学習への利用条件も確認します。通知は必要な担当者へ届く範囲に絞り、要約の送信だけで対応完了にしない運用にします。

試験導入で確認すること

まずは一つの窓口・用件・時間帯に範囲を限定し、比較する条件と停止基準を決めます。導入前後で曜日、受付時間、着信数、用件、配置人数が違えば、その差も評価に残してください。

切り替える前のチェックリスト

  • ピーク時の同時着信と、回線・AI・転送先の上限を確認したか
  • 対象外の質問に推測で答えず、人への確認に切り替えられるか
  • 人を希望する電話、聞き取りが難しい電話を引き継げるか
  • 転送先不在、通知遅延、連携エラーでも未対応案件を追跡できるか
  • 折り返し担当者、期限、期限超過を確認する責任者が決まっているか
  • 障害時に既存の受付へ戻す手順と、切り替えを判断する人が決まっているか

応答率と一緒に見る指標

観点試験中に確認すること
つながりやすさ受付前の拒否、待機中の切断、人につながるまでの時間
受付の正確さ用件・連絡先の誤記、誤案内、聞き直しの発生
引き継ぎ転送失敗、担当者の未確認、折り返し期限超過
顧客の手間同じ内容の二重説明、再入電、人を希望した際の接続
運用の負担通話・記録・確認・折り返しに使った時間と総費用

率だけでなく件数と対象期間も残します。応答率が上がっても、未対応案件や誤案内が増えていれば運用を修正する必要があります。重要な引き継ぎ漏れ、権限のない約束、復旧経路の不具合が見つかった場合は、対象の自動受付を止めて既存受付に戻し、修正後に再テストします。

Bellであふれ呼対策を検討するには

Bellの機能一覧では、シナリオ設計、用件の聞き取り、転送、通話記録などを確認できます。通話履歴・AI要約は、受け付けた内容や要対応事項を担当者が確認する際の機能です。AIの要約は必要に応じて通話記録と照合し、人が対応を引き受けたかを別に管理します。

検討時には、通常時とピーク時の着信状況、現在の回線・転送構成、任せたい用件、人へつなぐ条件、折り返し体制をまとめておくと確認が進めやすくなります。同時受付数、利用料金、転送失敗時の動作、記録・通知の条件は個別に確認してください。

あふれ呼対策は、入口の接続、受付の正確さ、その後の対応完了までを一緒に評価することが大切です。まずはログから詰まっている場所を見つけ、範囲を絞った試験で改善を確かめましょう。

よくある質問

あふれ呼と放棄呼の違いは何ですか?

あふれ呼は、着信が回線や受付体制の対応量を超えて応答しきれない呼を指します。放棄呼は、一般に担当者への接続を待つ間に発信者が切断した呼です。ただし、あふれ呼に待ち呼を含める場合や、放棄呼にシステム側の切断を含める場合もあるため、利用中のシステムの定義を確認してください。

あふれ呼率・放棄呼率はどう計算しますか?

最初に、集計対象となる状態、期間、分母を決めます。例えば待機中の放棄呼率は、待機中に発信者が切断した件数を、同じ対象集団で待ち行列に入った件数で割って計算します。全着信を分母にした割合とは異なるため、回線側の拒否、短時間の切断、折り返し受付の扱いも記録してください。

AI電話を導入すれば、あふれ呼をゼロにできますか?

ゼロになるとは限りません。電話回線、同時受付、転送経路、連携先にはそれぞれ条件や上限があります。AIが応答できても、人への転送や折り返しが滞る場合があるため、ピーク時の接続と受付後の処理まで確認します。

人員を増やす前にできる対策はありますか?

ピークに合わせた配置、保留・後処理の見直し、FAQの改善、IVRや折り返し受付、AIによる定型案内・一次受付が候補です。回線の容量不足なのか、担当者への接続待ちなのかを調べて選びます。折り返しを受け付ける場合も、実際に対応する担当者と時間を確保してください。

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寺下 昇希

寺下 昇希

Bell 技術責任者

Bellの技術責任者として、AI電話システムの設計・導入・改善に携わっています。現場の電話業務課題を、実務に耐える会話設計とシステム連携で解く知見を発信しています。

  • AI電話プロダクトの設計・実装を統括
  • 業種別シナリオ設計と運用改善を多数支援
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