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建設DX
2025-10-02

建設業の社内問い合わせをAIで自動化:遅延ゼロと情報漏えい防止を両立する最新事例

寺下 昇希Bell 技術責任者読了時間: 8

建設現場と本社の情報断絶、問い合わせ遅延、属人化——これらをAIチャットボットと音声AIで一気に解消。RAGと権限管理で安全に自動回答し、24/7対応・モバイル対応・エスカレーション連携までを解説。導入事例と成功指標、短期PoC手順も紹介。

建設業における社内問い合わせの壁

建設業は多拠点・多職種が同時並行で動くため、現場と本社の情報流通が滞ると全工程に遅延が波及します。メール・電話・口頭に依存した問い合わせ対応は、担当不在や情報のサイロ化、ヒューマンエラーを招きがちです。2024年4月から建設業にも時間外労働の上限規制が適用され、問い合わせ対応の省力化は待ったなしのテーマになりました。

現状と課題:なぜ“問い合わせ”がボトルネックになるのか

  • 情報の分散と更新遅延:手順書がSharePoint、図面はBox、申請は紙…と点在し、最新版の所在が不明確。
  • 対応の遅延:担当者不在・受付時間外に弱く、現場の初動が止まる。
  • 属人化と品質ばらつき:ベテランに集中、FAQ整備が追いつかず再問合せが増加。
  • セキュリティとコンプライアンス:個人情報・機微情報の誤送信や誤共有のリスク。
  • 現場特有の制約:騒音環境や手袋着用で入力が困難、電波不安定による接続切断。

1. 問い合わせの種類と優先度が混在

  • 安全書類・入場手続き・資格証明
  • 図面改訂・施工手順・品質記録
  • 資材発注・納期確認・在庫
  • 勤怠・経費・システムアカウント

2. 既存ツールの限界

  • メール/電話は履歴が追えず、ナレッジとして残らない。
  • FAQは検索性が低く現場語彙に未対応。

3. 測定不能な“ムダ時間”

  • 「誰に聞くべきか」を探す時間
  • 最新版を検証する時間
  • 再問い合わせの往復時間

解決策:AIチャットボット×音声AI×ナレッジ融合

AIは「即時に、正確に、同じ品質で」回答する仕組みをつくります。鍵はRAG(Retrieval Augmented Generation)と権限連携です。

1. アーキテクチャの要点

  • チャネル統合:Teams/Slack/LINE WORKS、Webに1つのAIを配備
  • 音声対応:電話問い合わせはAIコールのBellで自動応答し、チャットとナレッジを共通化
  • 認証・権限:SSOとグループ権限で閲覧制御(部署・現場単位のアクセス制限)
  • ナレッジ源:SharePoint/Box/Confluence/図面PDF/稟議テンプレート
  • RAG:常に社内ドキュメントを根拠に回答し、出典リンクを提示
  • ガードレール:禁止語/機微情報検知、信頼度しきい値で人間へエスカレーション
  • ITSM連携:ServiceNow/Jira/メールでの自動チケット化
  • 分析:クエリ傾向、未解決カテゴリ、回答カバレッジを可視化

2. 導入・運用のポイント

  • モバイル最適化:短文UI、音声入力、弱電波時の再送制御
  • 現場語彙の学習:品番・略語・現場俗語の同義語辞書
  • バージョン管理:最新版のみ回答、旧版は警告付き表示
  • 継続改善:未解決ログ→FAQ化→再学習のループ

成功指標(KPI)と測定設計

  • 平均初動応答時間(秒)
  • 自動解決率(人手介在なく完結した割合)
  • 一次エスカレーション率(AI→担当)
  • 一件あたり対応コスト(人件費換算)
  • 問い合わせピーク時の待ち時間
  • 現場の作業停止時間(自己申告/センサー連携)
  • 文書の最新版参照率(RAGの出典クリック率)

ROIの考え方:

  • 効果 = 削減工数 × 人件費(含む割増・外注)
  • 純効果 = 効果 −(ライセンス+運用+改善工数)

Bell導入事例(匿名要約)

事例A:総合建設(プロジェクト管理中心)

  • 課題:問い合わせがメール・電話に集中し、窓口担当が逼迫。情報が散逸し最新版確認に時間。
  • 施策:社内問い合わせチャットボット+RAG、Teams連携、図面と手順書を優先索引。未解決は自動で担当者にエスカレーション。
  • 効果:受付時間外の対応が可能になり、現場の初動が滞りにくくなった。よくある質問の再発率が減少し、窓口の負荷が平準化。

事例B:公共工事主体(多部署連携)

  • 課題:受付時間外の問い合わせ遅延と、複数部署間の情報共有で漏えいリスク。
  • 施策:AIチャットボットを24/7稼働、回答根拠の自動添付、権限ベースで出力制御。電話はAIコールのBellで一次受け→必要に応じて担当者に転送。
  • 効果:受付時間外の遅延が解消。根拠提示により誤配布と誤回答が減り、共有ポリシー順守が徹底。

実装ステップ(最短2〜4週間PoC)

1. 設計

  • ユースケース選定(上位20件の問い合わせカテゴリ)
  • データ棚卸し(公開可・部署限定・秘匿の区分)
  • 成功指標・SLAの定義

2. 構築

  • チャネル接続(Teams/Slack/電話)
  • RAGのコネクタ設定とインデックス作成(図面PDFはOCR/レイアウト解析)
  • ガードレール(禁止語・外部送信制御・信頼度しきい値)

3. チューニング

  • 同義語辞書(現場語・型番)
  • 回答テンプレート(安全・品質・法務注意書き)
  • エスカレーション経路(担当者、時間帯別ルール)

4. 運用

  • 週次レビュー:未解決ログ→FAQ反映→再学習
  • 月次レポート:自動解決率・削減工数・改善提案
  • セキュリティ点検:アクセス権・ログ監査・保持期間

安全性とコンプライアンスの要点

  • 最小権限アクセスとテナント分離
  • 個人情報・機微情報の匿名化/マスキング
  • 回答の根拠提示と最新版固定(版数・日付の明示)
  • 監査ログの長期保管と改ざん検知
  • 教師データの社外持ち出し禁止設定

よくある質問(FAQ)を強くするコツ

  • 現場起点で作る(入場、KY、搬入、重機手配、資格、気象対応、合番手続き)
  • 1トピック1意図、結論先出し、30秒で読める分量
  • ドキュメントの出典URLと版数を必ず添付
  • “わからない”時は人につなぐ勇気(しきい値管理)

まとめ:生産性と安全の両立へ

社内問い合わせAIは、現場の待ち時間と情報リスクを同時に削減します。チャットと音声を統合し、RAGと権限管理で“正しい情報を、誰にでも、今すぐ”届ける体制をつくりましょう。小さく始めて早く回す——PoCで効果を可視化し、対象範囲を段階的に拡大するのが成功の近道です。

タグ

AIチャットボット
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寺下 昇希

Bell 技術責任者

AI電話システムの専門家として、美容室や営業支援会社、クリニックなど幅広い業種での導入支援を行っています。アウトバウンド架電やインバウンド受電のシナリオ設計、既存システムとの連携など、お客様のニーズに合わせた包括的なソリューションを提供しています。

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