病院のAI電話対応|代表番号から外来・病棟・検査部門へつなぐ設計
病院の代表電話をAIで受け付ける際の、多部門への取次、面会案内の更新、救急連絡の専用経路、転送不応答時の対応を解説。院内の責任分担と導入試験まで整理します。
病院の代表電話では、患者の予約確認、家族からの病棟への連絡、検査に関する質問、他院からの問い合わせが同じ番号に届きます。着信を受けるだけでなく、どの部門が、どの時間帯に、何を引き受けるかが分からなければ、転送先でもう一度説明してもらうことになります。
AI電話を検討する病院では、代表番号の案内と取次を一つの業務として設計します。この記事の中心は、多部門の振り分けと引き継ぎです。個別の予約変更処理はクリニックの予約変更とAI電話対応で詳しく扱っています。以下の例は架空の病院を想定した運用例であり、Bellの導入実績を示すものではありません。
「診療科名が分かる人」だけを前提にしない
電話をかける人は、院内の組織図を知っているとは限りません。「明日の検査について」「入院中の父のことで」といった表現から、適切な担当先を確認する必要があります。最初から多数の部門名を読み上げると、選び間違いや途中離脱が起こりやすくなります。
まず用件を短く聞き、次に必要な項目だけを確認します。外来なら予約窓口か診療上の相談か、入院関係なら公開できる面会案内か個別の患者への連絡かを分けます。判断できない場合の総合受付も残し、利用者に院内の担当部署を推測させないようにします。
| 用件 | 主な受付先の考え方 | 代表電話での注意点 |
|---|---|---|
| 外来の予約・変更 | 外来予約窓口または診療科の受付 | 代表電話で変更確定まで行うかは別途定義 |
| 入院・病棟への連絡 | 病棟受付、時間帯別の指定担当 | 入院の有無や病状を照合前に回答しない |
| 検査の問い合わせ | 検査予約担当または医療職 | 食事・服薬など個別指示をAIで変更しない |
| 面会・アクセス | 承認済みの公開案内 | 病棟別の制限と臨時変更を反映 |
| 救急・安全に関わる連絡 | 院内で承認した専用経路 | 通常の伝言一覧に混在させない |
診療科の名称だけで経路を決めると、「検査の日程を知りたい」と「検査の前に薬を飲んでよいか」が同じ窓口に送られます。用件と部門を分けて記録することで、事務担当者が扱える内容と医療職の説明が必要な内容を区別できます。
一件の検査問い合わせを、担当者の受領まで追う
代表番号では、質問の種類と連絡先を確認する
仮に、外来受診後の検査について患者が電話し、「来院する時刻を確認したい。薬についても聞きたい」と伝えたとします。AIは検査名や予約日時など院内が定めた最小限の項目を受け取り、服薬に関する質問が含まれることを記録します。薬の名前から一般論を回答せず、医療職への確認が必要な用件として引き継ぎます。
この段階で必要なのは、正確な診断情報の収集ではなく、正しい窓口への接続です。代表電話が詳細を何度も聞くほど、接続が遅れ、情報の保存範囲も広がります。引き継ぎ先が確認すべき内容まで先回りして集めないことが大切です。
曜日・時間帯・部門の受付範囲で経路を選ぶ
経路表には「検査部門」という名称だけでなく、受付時間、休日、一次転送先、つながらない場合の次の窓口を登録します。部門名と内線番号を一対一にするだけでは、昼休みや夜間に転送が失敗したままになります。
上の例で検査窓口が対応時間内なら、質問の要約を添えて担当先に接続します。本人確認が未完了の場合は、その状態も伝えます。代表番号での照合を、結果説明のための本人確認と同一とみなさず、受け取る部門が必要な確認を行えるようにします。
応答がなければ、決めた代替経路へ進む
担当先が話中・不応答だったときは、無期限に待たせたり、代表番号へ戻して同じ会話を繰り返したりしない構成が必要です。院内で決めた条件に従い、代替窓口に接続するか、確認待ちとして受け付けます。翌日の検査など期限がある用件は、その日時も引き継ぎ情報に残し、担当者が優先順位を決められるようにします。
折り返しを案内する場合は、実際に対応できる時間帯と担当部署を伝えます。「すぐに連絡します」と一律に約束する運用は避けます。最終的に、担当者が受領した記録、回答の状況、未対応の理由を確認できて初めて、院内の取次が管理できます。
面会・検査案内には、更新の責任者と期限を置く
面会時間や受付場所は定型的な質問ですが、病棟、曜日、院内の事情によって案内が変わります。古い情報を速く回答するだけでは、来院した家族と現場の双方に負担が生じます。情報ごとに承認者、適用する病棟、開始日、終了日を付け、臨時変更を通常のルールより優先する仕組みにします。
たとえば一つの病棟だけ面会方法を変更する場合、病院全体の面会案内を上書きするのではなく、対象を限定します。該当病棟が分からない電話には、全病棟に共通する案内だけを伝えて確認先を案内します。公開情報の提供に、患者の入院有無の確認を混ぜないことも重要です。
検査前の持ち物や受付場所は、承認済み文書を参照できます。一方、食事制限や服薬の指示は、同じ検査でも個別条件が関わる場合があります。一般的な案内を患者個人への指示として言い換えず、案内文と本人が受け取った指示に違いがあれば担当部門に戻す設計にします。
救急の連絡は、通常受付と別に試験する
AIによる用件整理と、医療上の緊急度判断は別です。代表電話の自動化を、救急相談や診断を代替するものとして運用しないでください。緊急の申告や院内で定めた表現があった際に、どの専用経路へ接続するかを医療側の責任者が承認します。
この経路には、通常の予約や面会の質問を先に完了させる条件を置かず、追加の聞き取りを最小限にします。夜間や休診日の接続先、専用窓口が応答しない場合の案内も含めて確認します。利用者が人との会話を求めた場合や、音声の聞き取りが続けて失敗する場合にも、有人対応へ進める必要があります。
転送開始のログだけで「救急連絡が完了した」と集計すると、実際の未接続を見落とします。専用経路の試験は関係部署と時間を調整し、試験用の回線や手順で実施します。運用中の緊急回線に、無調整で大量の試験電話をかけないようにしてください。
録音と要約は、院内でも閲覧範囲を分ける
病院の代表電話には、診療情報だけでなく、職員宛ての私的な連絡や取引先からの相談も入ります。全通話を同じ共有フォルダに保存する方法では、業務上不要な情報まで広く閲覧されるおそれがあります。録音、文字起こし、部門への要約を別々のデータとして管理し、担当範囲に応じた権限を設定します。
個人情報保護委員会・厚生労働省の医療・介護ガイダンスを確認したうえで、委託する範囲、保存・削除、事故時の連絡を院内の担当部署と整理します。AI事業者の説明だけで判断せず、契約と実際の設定を照合することが必要です。出典:医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス、2026年4月一部改正・2026年10月7日確認
導入を決める前の受入試験
| 試験する場面 | 合格条件の例 | 確認を担当する部署 |
|---|---|---|
| 部門名が分からない問い合わせ | 必要な追加質問で窓口を絞るか、総合受付へ移る | 代表受付と各部門 |
| 転送先が話中・不応答 | 代替経路へ進み、転送ループが起きない | 電話設備担当と受付 |
| 病棟の臨時面会ルール | 対象病棟と適用日時に合う案内だけを返す | 病棟と広報・案内責任者 |
| 個別の病状・検査相談 | AIが回答せず、適切な担当者へ引き継ぐ | 医療側責任者 |
| 連携や電話サービスの停止 | 承認済みの代替受付へ戻せる | システム担当と運用責任者 |
開始時は、公開案内と一部の部門取次など、担当者が結果を点検できる範囲に絞ります。院内で番号の利用条件や電話交換機の設定が異なるため、既存番号を使えるか、保留や転送時に何が聞こえるかも実回線で確認します。転送回数が減ることだけでなく、最初に正しい窓口へ届くことを評価します。
費用には、サービス利用料と通話料に加え、部門ごとの案内整備、転送設定、試験、日々の更新作業を含めます。部門が増えるほど、最初の会話作成より経路の維持管理が重要になるためです。導入後は、未接続、再転送、未対応の折り返し案件、誤案内による再入電を定期的に見直します。
代表電話の負担を、一つの用件から見直す
電話設備や院内システムとの接続、通知手段、同時着信の条件は個別確認が必要です。平日・夜間・休日で変わる受け口と不応答時の経路を確かめ、公開案内や一部の部門取次など、院内で結果を確認できる範囲から導入を考えます。
代表電話への問い合わせが集中し、患者さんを待たせたり、部門間の転送を繰り返したりしている。そうした負担を見直す入口は、日々繰り返される用件にあります。面会案内から始めるのか、外来や検査部門への取次を見直すのか。よくある電話を一つたどるだけでも、AIに任せたい部分と院内で対応する部分を考えやすくなります。
すべての部門の運用をまとめる前でも、Bellへ病院の代表電話についてご相談ください。患者さんが必要な窓口へ進みやすく、職員にも無理のない受付を目指して、最初の対象から一緒に整理しましょう。
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寺下 昇希
Bell 技術責任者
Bellの技術責任者として、AI電話システムの設計・導入・改善に携わっています。現場の電話業務課題を、実務に耐える会話設計とシステム連携で解く知見を発信しています。
- AI電話プロダクトの設計・実装を統括
- 業種別シナリオ設計と運用改善を多数支援