電話・クレーム対応の不安を減らす実践ガイド:新人向け会話例とAIの使い方
電話が苦手な新人・担当者に向けて、聞き返し、保留、担当者不在、苦情の取り次ぎを会話例で解説。引き継ぎメモ、練習方法、AI受付に任せる範囲まで具体化します。
電話が苦手なとき、挨拶の言葉よりも「答えが分からなかったらどうしよう」「怒られたら電話を切れなくなるのでは」という心配が先に立つことがあります。そこで必要なのは、すべてを即答できる知識より、確認する言葉と、助けを呼べる手順です。
新人や兼任担当者が一次受付を担う場合、目標を「相手の用件を取り違えず、必要な人につなぐ」に絞ると、練習する内容が明確になります。この記事では、電話口で使える会話例と、その後の引き継ぎまでを扱います。「電話恐怖症」という呼び方で不安を表す方もいますが、医療上の診断や治療を解説する記事ではなく、業務の進め方を整理する実践ガイドです。
電話を取る前に、三つの逃げ道を用意する
台本を渡されても、確認先が分からなければ「少々お待ちください」の後で止まってしまいます。最初に上司と確認したいのは、通常の取次先、判断に迷ったときの相談相手、その人が不在のときの代わりです。名簿には内線番号だけでなく、受付時間と、つながらない場合の連絡方法も書いておきます。
たとえば返品の電話を受ける担当者に必要なのは、すべての返品条件を暗記することではありません。どの情報を聞き、誰が可否を決めるかを知ることです。「購入日と商品名を聞いたら責任者へ渡す。受付担当者は返金を約束しない」と決まっていれば、会話の終点を見失いにくくなります。
もう一つ、受電中に相談する合図を決めます。チャット、卓上の札、隣席への合図など方法は職場次第ですが、相談を出したら誰が受け取るかまで確かめてください。助けを求めることを失敗と扱う職場では、台本だけを増やしても運用は変わりません。
場面別の会話例:言い切るより、確認を挟む
以下の会話は練習用の想定例です。会社名、保留の目安、折り返しの受付時間は、自分の職場で実行できる内容に置き換えてください。
聞き取れなかったときは、分かった部分を残して聞く
名前や数字が聞き取れないまま先へ進むと、後で本人を探す作業が増えます。最初から全部言い直してもらうより、聞き取れた部分と不足した部分を分ける方が、相手の負担も小さくなります。
顧客:「佐藤です。先週お願いした部品の件で、田中さんをお願いします」
担当者:「佐藤様、部品の件で田中へのお電話ですね。差し支えなければ、会社名をもう一度お願いできますか」
電話番号なら数桁ずつ区切って復唱します。別の顧客の情報を推測して提示したり、発信者番号をそのまま折り返し先と決めたりせず、「折り返しは今おかけの番号でよろしいでしょうか」と確認します。周囲の音で聞こえない場合には、聞き方を工夫するだけでなく、静かな場所への移動や別の連絡方法を相談して構いません。
保留には、目的と次の動作を添える
保留の目的が分からないと、相手は待った後も同じ説明をするのではと感じるかもしれません。「確認します」だけで終えず、何を確認するかを一文添えます。
担当者:「担当部署を確認しますので、お待ちいただけますか」
顧客:「急いでいるので、長くは待てません」
担当者:「承知しました。すぐに確認できない場合は、折り返しの受付に切り替えてもよろしいでしょうか」
待ち時間の目安を伝えるなら、実際の社内ルールに合わせます。見込みが外れたまま保留を続けず、いったん戻って状況を説明します。保留中に回答が見つからなくても、架空の見通しを作る必要はありません。「確認に時間がかかっています。担当者からのご連絡に切り替えられますか」と選択肢を示します。
担当者不在では、戻り時刻を推測しない
「たぶんすぐ戻ると思います」と伝えると、折り返しが遅れた際に新たな苦情になり得ます。在席、外出、会議中など、業務上伝えてよい範囲で状況を説明し、戻り時間が未確認ならそのまま伝えます。
担当者:「田中は現在電話に出られません。戻りの時刻は確認できていないため、折り返しのご希望をお預かりできますか」
顧客:「今日中に必要です」
担当者:「本日中のご連絡をご希望ですね。期限と用件を責任者にも共有します。現時点では折り返し時刻のお約束はできませんが、お受けできる時間帯を教えていただけますか」
希望を預かることと、実行を約束することを分けるのがポイントです。期限に間に合わない可能性がある案件は、メモを机に置くだけでなく、代わりの担当者へ直接連絡します。
苦情を受けたら、事実・困りごと・希望を分ける
強い口調で話されると、すぐに謝罪や解決策を並べたくなります。しかし、まだ確認していない返金や補償を約束すると、自分にも次の担当者にも難しい対応が残ります。まず「何が起きたと相手が説明しているか」「何に困っているか」「何を希望しているか」を分けて聞きます。
不便へのお詫びと、責任や補償を認める判断も分けます。「お待たせして申し訳ありません。経緯を確認します」は、待たせた状況についての言葉です。「当社がすべて悪いので返金します」と、事実確認前に結論まで進む必要はありません。一方、明らかな案内ミスまで曖昧にするのではなく、確認できた事実については責任者と共有して説明します。
| 電話で起きていること | 一次担当者が行うこと | 自分だけで決めないこと |
|---|---|---|
| 注文が届かないという相談 | 注文を特定する情報、希望する対応を確認 | 未確認の到着日、補償額 |
| 前の担当者と説明が違う | 前回の案内内容と日時を記録 | どちらが正しいかの推測 |
| 同じ説明を繰り返している | 既に聞いた内容を要約して認識を合わせる | 繰り返しだけを理由に迷惑行為と決めること |
| 個人への攻撃や脅しが続く | 社内の安全手順で上司に応援を求める | 一人で説得を続けること、独断の取引停止 |
「責任者を出してほしい」という依頼自体を、カスタマーハラスメントと決めつけないことも大切です。説明に納得できない、受付に決裁権限がないなど、責任者に話す必要がある場合もあります。正当な苦情の調査と、従業員を傷つける言動への対応は、両方進められます。
受付から引き継ぎまでの一連の例
次は、商品が届かず困っている顧客から新人担当者に電話が入る想定例です。配送状況を照会する権限はなく、注文担当者へ引き継ぐ職場を想定しています。実際の導入事例や成果ではありません。
顧客:「昨日届くと言われたのに来ていない。どうなっているの」
担当者:「到着予定を過ぎても届いていないのですね。注文担当へ確認します。注文番号はお分かりになりますか」
顧客:「今、番号は分からない。毎回同じことを聞かれる」
担当者:「何度もお手数をおかけしています。番号が分からないことも含めて引き継ぎます。確認のため、お名前と購入時期を伺ってもよろしいでしょうか」
ここでは、番号が分からないため受付をやり直すのではなく、不足情報を明記して人へ進めます。別の情報で照合できるかは、会社の本人確認手順に沿って注文担当者が判断します。
担当者:「昨日到着と案内されたこと、商品がまだ届いていないこと、本日中の状況確認をご希望であることを、注文担当に伝えます。確認しておつなぎしますので、お待ちいただけますか」
取次先が電話に出なかった場合は、顧客に戻ってその事実を説明し、折り返し方法を相談します。担当者が受け取ったことを確認するまで、案件を完了扱いにしません。顧客には未確認の配送日時を伝えず、次に何を確認するかを明らかにして終話します。
引き継ぎメモは「怒っている」で止めない
この想定例なら、メモは次のように書けます。
「購入商品未着の相談。顧客申告では昨日到着と案内済み。注文番号は手元になく未確認。氏名と購入時期を聴取済み。希望は本日中の配送状況の連絡。受付では到着日時・返金を約束していない。折り返し先と連絡可能時間は確認済み。注文担当に照会を依頼し、受領確認待ち。」
顧客が話した内容、社内で確認した事実、まだ分からないことを分けると、次の担当者が同じ質問を重ねにくくなります。連絡先は所定の記録場所に残し、誰でも見られるチャットや付箋に広く転記しない運用にします。
うまく進まない電話を一人で抱えない
相手が話し続けて確認できないときは、「正確に担当へ伝えたいので、ここまでのお話を確認してもよろしいでしょうか」と区切ります。それでも個人への侮辱や脅しが続く場合は、反論や説得で収めようとせず、決めた応援手順を使います。終話や対応方法の変更は、職場の方針と責任者の判断に沿って行います。
たとえば、担当者の私的な連絡先を要求されたら、「個人の連絡先はお伝えできません。この件は責任者へ引き継ぎます」と業務上の窓口を示します。安全に関わる具体的な発言がある場合には、通常の苦情取次よりも安全手順を優先します。新人がすべての情報を聞き終えてから相談する必要はありません。
通話後も、すぐ次の電話に戻れるかは本人と上司で確認します。振り返りでは「もっと上手に話せたはず」と評価する前に、相談相手がつながったか、台本に無理がなかったかを点検してください。不安が強く仕事や生活に支障が続く場合は、業務手順の見直しに加え、職場の相談窓口や適切な専門家に相談する選択肢があります。
AIは、受付と練習の補助から使う
AI電話を使うなら、営業時間案内や折り返し希望の受付など、回答の根拠と完了条件を決められる業務から検討します。AIが用件を聞いていても、人が引き継ぎ内容を読めない、通知に気づかないという状態では、新人の負担は通話後へ移るだけです。引き継ぎメモの項目を先に決め、その項目がそろうかを試してください。
AIによる要約も確認前の下書きです。「今日中に連絡してほしい」が「本日中に連絡すると約束した」に変わっていないか、特に希望と約束を見直します。Bellを含むサービスの選定では、聞き直し、人への切り替え、転送先が不通の場合、記録の訂正方法を実際の会話で確かめます。苦情を自動で解決したり、不安がなくなったりすることを前提にしないでください。
練習にAIを使う場合は、架空の会社名や注文内容でロールプレイを行います。顧客の録音や個人情報を、許可されていないサービスへ入力しないようにします。最初は「聞き返しだけ」「保留から戻るところだけ」と短い場面を練習し、その後で不在や苦情を組み合わせると、どこで言葉に詰まるか確認しやすくなります。
練習の成果は、速さ以外でも確認する
指導者は、挨拶の滑らかさだけでなく、用件を復唱できたか、不明点を不明のまま伝えられたか、約束を広げなかったか、必要なときに応援を求められたかを確認します。通話時間を短くすることだけを求めると、確認不足や早すぎる終話につながるおそれがあります。
実務で振り返るなら、折り返し先の訂正、担当者の再確認、引き継ぎ漏れを記録します。担当者本人には、どの場面が難しかったかを聞き、台本を一つずつ直します。個人の苦手意識を採点するためではなく、次の電話で使える手順を増やすための振り返りです。
まず準備するのは、短い会話例、取次先の一覧、引き継ぎメモの三つです。組織全体の記録・管理者レビュー・従業員支援を整える場合は、企業向けカスハラ対策の実装ガイドで、受付担当者を支える側の運用も確認してください。
電話の負担を、担当者の頑張りだけに任せないために
電話への不安に向き合うには、会話の練習に加えて、受ける仕事そのものを分担する方法もあります。よくある問い合わせが重なり、新人や兼任担当者が本来の仕事に戻れないなら、Bellに任せる受付と、人が受け持つ相談を一緒に考えてみませんか。
職場の電話対応を見直したい方は、Bellへご相談ください。AIに何を任せるかが決まっていなくても、「この場面の負担を少し軽くしたい」というお話から始められます。
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寺下 昇希
Bell 技術責任者
Bellの技術責任者として、AI電話システムの設計・導入・改善に携わっています。現場の電話業務課題を、実務に耐える会話設計とシステム連携で解く知見を発信しています。
- AI電話プロダクトの設計・実装を統括
- 業種別シナリオ設計と運用改善を多数支援